共同印刷株式会社
代表取締役社長
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 金沢工業大学 客員教授
コロナ禍による「新しい生活様式」が求められるなか、共同印刷グループはTOMOWELの理念に根差した働き方改革の実現をめざしています。本報告書では、ワークライフバランスや働き方改革の第一人者として、多くの企業の取り組みをサポートされている小室淑恵氏をお招きし、当グループの働き方改革や今後の価値創造ビジネスについてご意見をいただきました。
小室:新型コロナウイルス感染症が世界経済に大きな影響を与えています。事業にはどのような影響がありましたか。
藤森:共同印刷グループの事業はあらゆる産業と密接に結びついているので、2020年3月以降、さまざまな変化が現れました。情報コミュニケーション部門は、店頭プロモーションの縮小や各種キャンペーンの延期・中止など販促需要が大幅に減少し、関連する雑誌などの出版物の落ち込みも続いています。情報セキュリティ部門は、インバウンドの減少や外出自粛などにより人の移動が減り、交通系ICカード事業などが大幅に減少しています。一方、生活・産業資材部門では巣ごもり需要により家庭用の食品や日用品の消費量は増加しています。また、社内への影響という面では、かねてから取り組んでいた働き方改革に一気に加速がかかりました。
小室:まるで"黒船が来た"という感じですよね。
藤森:はい。社員やそのご家族、関係企業の皆さまの感染予防のためにテレワークやビジネスチャット、テレビ会議の活用などで出勤や移動を制限しましたが、このような事態がなければ、新しい働き方の浸透はここまで急速に進まなかったと思います。
小室:緊急事態宣言の前後、政府は出勤者の抑制を要請していましたが、実際はどのくらいだったでしょうか。部門によっても違いはあると思いますが。
藤森:製造業ですので、生産現場ではどうしても達成に限界があります。また紙の印刷を主とする部門では、印刷の色調は実際に出力された紙で確認したいというニーズが多く、その対応などのため、大幅な出社抑制が難しい状況でした。一方、他の営業部門や研究・開発部門、管理部門はテレワークに移行しやすかったこともあり、生産現場を除く出勤抑制率は4割程度でしょうか。お客さま企業への訪問を制限し、リモートを活用してやりとりさせていただきましたので、街中や交通機関などによる人との接触機会はかなり減らせたと思います。
小室:この間で、働き方に対する意識が変わった企業は非常に多かったです。少し前まで働き方改革に難色を示していた方からも「小室さんがずっと言ってきたとおりになった」、「本当に必要なことだったと納得した」といった声がよく聞かれました。この変化は新型コロナウイルスの影響のあるなしに関わらず、起こらなければならなかった変化だと思います。日本ではこれから人口減少が加速していきますが、企業は働き方や生産性を見直し、少ない労働力で高付加価値のイノベーティブな商品を作らなければ生き残れないからです。