多様性を力に、パートナーとともにサステナブルなストーリーを創造する

トップ対談:TOMOWELの理念でSDGsがめざす未来を創る

蟹江:SDGsを見据えた取り組みの前提として、働き方改革やダイバーシティはどのようにお考えでしょうか。

藤森:企業にとってダイバーシティの重要性はいうまでもありません。当グループにもシニアや外国人、障がい者をはじめ多様な方々が在籍しています。すべての職場で差別なく、公平であることは大前提です。当社は、働き方改革推進室を設置し、一人ひとりが最大限に能力を発揮できる職場環境の構築をめざしています。具体的には、常時会社に来る方、サテライトオフィスで働く方、テレワークで働く方など、働く時間や場所によらない多様な働き方を通じて、ワークライフバランスの実現を追求しています。

蟹江憲史氏

蟹江 憲史氏
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー

蟹江:多様性があると、それだけ頑強な仕組みができます。多様性を維持することが一つの価値だと思います。色々なアイデアが触れ合うことで可能性も広がりますし、失敗してもカバーし合える。多様性は組織の強化に寄与すると思います。

藤森:当グループには約3800名の社員がいます。その家族や、約1500社の協力会社の皆さんとその家族をあわせると約10万人になります。共同印刷はそれだけの方の生活に関わっているのです。ですから、働き方改革にしても、社員だけでなく、その10万人のことを考えなければなりません。地域社会や同業者間、もしくは協力会社間での提携を進めていくことは不可欠なのです。社会のなかでつながりをつくり、そこでお互い理解し合うことでビジネスが生まれてくる。そして、そのビジネスが結果的に社会を豊かにするのだと思います。そういう意味で、地方創生にも力を入れています。当社の持つプロモーションやメディア、観光、流通などの幅広い分野でのノウハウを生かして地域のパフォーマンスを上げることに貢献するため、地方自治体や政府、関係企業をつないでいく活動に取り組んでいます。

藤森 康彰 共同印刷株式会社 代表取締役社長

藤森 康彰
共同印刷株式会社
代表取締役社長

蟹江:少子高齢化に伴い人口が減少していくなかで、SDGsにおける地方創生に関心が高い地方自治体は非常に多いのですが、従来のやり方ではパートナーシップが見つかりにくい。そのきっかけというところでSDGsにおけるパートナーシップに関心が高まっています。SDGsには17の目標がありますので、その観点から色々な社会課題の解決につなげることができると思います。

藤森:「 人間が想像できることは、必ず実現できる」といわれています。何代か先になるかもしれませんが、我々が想像する未来と、実現に向けた取り組みが、結果的に社会の課題解決にもつながっていく。そんな取り組みを、それぞれの役割のなかで進めていくことが大切だと思います。

蟹江:ESG投資の流れも加速しており、今後は社会に与えるインパクトや社会との関係、社会への貢献という非財務情報が企業の評価でも大事になってきます。SDGsの次のステップとして、それをどうやって「測る」かということが大切になります。そうすると投資家の注目を集めることにもつながりますし、内外のステークホルダーに対して、企業がよい方向に向かっていることが可視化できるようになります。もう一つはサステナブルな社会を事業で実現するストーリーです。そのストーリーというものを語る会社になっていただくと、さらに良いと思います。

藤森:SDGsの視点で物ごとを考え、環境や社会との調和のなかで生きていくことは、社員の人生を豊かにすることにつながっていくと考えています。そうすることで仕事への取り組み方が変わり、サステナブルな社会の実現に向けた事業のストーリーが生まれてくると思います。そのためにも、まずはTOMOWELの理念を通じて、関係するすべてのステークホルダーの皆さま一人ひとりが豊かな人生のストーリーを描けるように努力したいと考えています。

対談を終えて―蟹江憲史

SDGsなど大きな課題に関心を持たれ、企業のフィロソフィーに組み込んだ上で取り組みをされていることに、先見の明があると感じています。未来志向でさまざまな物ごとを捉え、社会のことをしっかり考えられている。

次のステップでは、まず社員に、そして共同印刷グループを支える10万人の方々に考え方を伝える一つのツールとしてSDGsが使えるのではないかという印象を非常に強く持ちました。

蟹江憲史氏

プロフィール:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所 シニアリサーチフェロー。東京工業大学准教授を経て現職。
欧州委員会Marie Curie Incoming International Fellowおよびパリ政治学院客員教授などを歴任。
日本政府SDGs推進本部円卓会議委員、内閣府地方創生推進事務局自治体SDGs推進のための有識者会議委員などを兼任。