トップ対談:TOMOWELの理念でSDGsがめざす未来を創る

トップ対談:TOMOWELの理念でSDGsがめざす未来を創る

藤森 康彰

共同印刷株式会社
代表取締役社長
 

蟹江 憲史氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所 シニアリサーチフェロー

共同印刷グループは、TOMOWELの理念実現を通し、持続可能な未来に貢献していくことをめざしています。本年度は、世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の推進役であり、第一人者である慶應義塾大学の蟹江憲史教授をお招きし、当グループのCSRの取り組みとSDGsに貢献する価値創造の可能性について対談を行いました。

蟹江憲史氏

蟹江 憲史氏
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー

藤森:昨年は3カ年にわたる中期経営計画の初年度として、基本方針である「強みの育成・拡大と、事業基盤の改革に挑戦し、成長を続ける」に基づいた取り組みを進めました。2019年3月期の業績は、売上高977億8千2百万円(前期比2.8%増)、経常利益17億4千8百万円(前期比33.9%減)でした。
情報系事業では、社会におけるデジタル化の進展などにより、従来から大きな売上高を持っていた出版や販売促進分野を中心に紙媒体印刷の減少が続き、私たち印刷業にとって厳しい状況となっています。一方で、電子書籍やデジタル分野を中心としたプロモーション分野は好調です。また、企業の持つ顧客データをお預りして印刷物に加工するデータプリントや、その周辺に派生する事務作業を一括して請け負うBPO事業は堅調に推移しており、当グループも事業拡大に努めています。生活・産業資材系事業では、主に軟包装や紙器などのパッケージ類とラミネートチューブを扱っています。事業拡大をめざし、設備投資やM&Aなど大きな投資を行っています。

蟹江:本当に多岐な領域にわたっていますね。最近は、事業戦略を考える上で、CSRやSDGsのような社会的視点が重要視されていますが、御社の事業もリスクと機会の両面からアプローチするべきだと思います。例えば、紙を使う事業では、原材料がどのような森林からきたのか、その森林は適切に管理されているか、そこで児童労働などの人権侵害が行われていないかなど、リスクの面から見た責任があります。一方、機会の側面では、社会課題に対応することで、新たなマーケットを開拓していく可能性が生まれます。リスクに対応し、モノのトレーサビリティが広がれば、それだけコストもかかってきますが、それが付加価値として提供されることで「市場価値」になるという点が、今、CSRが変わってきている部分でもあります。
このような観点から言えば、国際社会が共通の課題として取り組むSDGsの17の目標と169のターゲットは、事業における「気づきのリスト」にもなっています。数ある課題のなかでも最近クローズアップされているのが海洋プラスチック問題ですが、容器包装をビジネスとされている御社にとっても関係が深いのではないでしょうか。

藤森 康彰 共同印刷株式会社 代表取締役社長

藤森 康彰
共同印刷株式会社
代表取締役社長

藤森:当グループは生活・産業資材系の事業を中心に、各種食品の軟包材をはじめ、化粧品や歯磨きのラミネートチューブ、医薬品向けの高機能包材など、相当量のプラスチックを取り扱っています。そのため、環境面においては、今後も課題への対応に向けた継続的な努力が必要です。喫緊の課題としては、バイオプラスチックの使用によるプラスチックの減量など、合理的な対処手段を検討していかなくてはなりません。また、これらは印刷業界全体の課題でもあります。プラスチックに負けない機能を持ち、加工性にも優れた紙の開発なども、製紙メーカーと協力して進めていきたいと思っています。

蟹江:そのような素材で作られた容器が実現できれば、世界中に拡がる可能性がありますね。世界各国でプラスチックについての規制が進んでいますから、逆にそれが追い風になるはずです。今後、持続可能な社会を作ろうという気運はますます高まっていきますし、温暖化対策も企業を中心にしっかり進めようという大きな流れもあります。マーケットを拡げていく上でも大きな力になるのではないでしょうか。

TOMOWELの理念を実現することで社会的責任を果たし、SDGsの目標達成につなげる

蟹江:一昨年発表したTOMOWELというコーポレートブランドは、CSRやサステナビリティの考え方を含んだものとお見受けしましたが、いかがでしょうか。

藤森:TOMOWELには社員、お客さま、社会、地球環境などすべてのステークホルダーと良い関係を築いていきたいという想いが込められています。我々は製造業ですから、モノづくりを通じて社会に貢献することができます。昨今は環境への配慮など社会に貢献する付加価値がお客さまにも求められているので、それにきちんと応えることが、企業として取り組むべき基本的なCSRだと考えています。

蟹江:企業が社会に対して誤った付加価値を提供することがないように、事業を通じて解決すべき社会課題をうまく整理するツールが、SDGsです。SDGsの目標に自社のどの事業が合致するかを見極めた上で取り組むことで、正しい、サステナブルな価値を生み出すことが可能になります。さらに、サステナブルな付加価値に加えて、ストーリーが必要です。バリューチェーン全体でそれがどこから来てどのように廃棄されていくかという一連の製品ライフサイクルを踏まえたストーリーを重視することが、サステナブルな社会の一つのキーワードであり、本来の付加価値につながっていくからです。社会が変化するにつれて、付加価値も変わります。SDGsは2030年をターゲットとした目標ですが、その先も見据えた、未来の形がそこに描かれています。ですから、SDGsに沿って色々な取り組みを進めていければ後で慌てることがないと思います。