共同印刷グループは、2012年から、中国やASEAN諸国に進出し、現地での製造、販売体制の確立を進めています。日本水準の品質・技術を現地に根付かせ、地域社会や人々の豊かさや健康への貢献をめざしています。
ASEAN諸国は人口、経済ともに成長著しく、購買力をもった中間層・富裕層が拡大しつつある消費市場として注目を集めています。なかでも、ベトナムは年6%以上のGDP成長を続けており、美容や健康意識の高まりから、オーラルケアやUVケア、美白製品などのトイレタリー、化粧品市場が目覚ましく伸長しています。
共同印刷グループは、日本国内で30%以上のシェアを持つラミネートチューブのASEAN諸国向け生産拠点としてベトナム工場を2015年に稼働しました。独自開発のオーバル形状ラミネートチューブや、業界初のフレキソ印刷を施した高機能かつ高精細なフルプリントラミネートチューブなどの高付加価値製品を生産する最新鋭の工場です。
2012年、中国の販売拠点である共印商貿・上海の設立に始まり、2015年にベトナム進出、さらに、2017年インドネシアのPT Arisu Graphic Primaを子会社化するなど、共同印刷グループはアジアネットワークの構築を進めてきました。
2019年以降も生産能力拡大に向け、新工場の建設を計画する一方で、調達、販売体制の強化確立にも取り組んでいます。日本国内で品質、技術、シェアのいずれにおいてもトップクラスの実績をもつラミネートチューブをASEAN諸国および中国の巨大マーケットに供給するアジアナンバーワンメーカーをめざしています。
私どものお客さまは世界でも最も高い水準の品質を求める外資系・日系メーカーです。そのため、当社の工場は、高水準の衛生環境下で、安心、安全、高品質な製品を安定的に供給しなければなりません。東南アジア諸国のなかでも、国民性や働きぶりの評価が高く、労働人口も豊富なベトナムの地で、最高水準の生産拠点を実現しようと決意しました。
ベトナム工場は国内と同様の品質管理体制を構築しています。ISO9001に加え、医薬品製造ガイドラインであるISO15378の認証を取得しており、医療用チューブの製造も可能な体制を整えています。
ASEAN諸国には、化粧品などに適した美麗性の高い製造技術や衛生水準をもつ供給メーカーがありません。小ロット、多品種対応で高付加価値チューブをお客さまに供給することが私たちの使命ですから、工場は技術面においても非常に高いレベルを追求しています。
ASEAN諸国ではまだ一般的ではない高品質な容器を供給し、人々の暮らしの安心や豊かさに貢献したい。ベトナム工場はその実現のために誕生しました。
日本では標準的な衛生環境、技術レベルでも、従業員の95%が現地採用のベトナム工場でそれを実現、維持していくことは日々、大変な努力を要します。品質に対する考え方も言語も違うなかで、求める水準をクリアするには、やはり、日本のモノづくりの考え方を理解してもらう必要があります。そこには相当の時間を費やしました。
現地の従業員教育では、日本から技術指導者を定期的に派遣し、技術だけでなく、「日本的なモノづくりに対する心構え」を伝えています。長期的な視点で技術者を充実させるために、3年間ほど日本に派遣する技能実習制度も導入しました。
もうひとつの課題は、従業員の定着率の低さでした。ASEAN諸国では、労働者が好待遇やスキルの向上を求めて、比較的短い期間に転職を繰り返す傾向があります。職場環境や食事の改善、親睦会や旅行会など、従業員の満足度を向上させる施策に積極的に取り組んでいます。
ベトナム工場では今後も生産増強に伴う雇用の拡大を見込んでいます。現地社員のモチベーションと会社へのロイヤリティを高め、技術スキルを根付かせることは、この地での事業拡大における重要な課題となっています。
共同印刷のラミネートチューブ技術の特長
チューブのシーム部(継ぎ目)にも印刷でき、デザイン性に優れている
独自開発の形状でフェイスの広さが特長
フレキソ印刷チューブ
業界に先駆けてフレキソ印刷を導入。
グラデーション、写真などの印刷再現性が高まり、デザイン表現の自由度が向上
現地のニーズや環境をより的確に捉え、めざす品質を実現するモノづくり体制を整えています。
お客さまと寄り添い、協働する共同印刷グループの本質は、日本を離れても変わることはありません。
ベトナム工場の製品は、主にベトナムやタイ、台湾の日系メーカーに販売しています。新製品受注の際は、お客さまと一体となって共同開発を行い、求める品質、スペックを満たす製品の開発、生産体制の整備を行います。
さらなる品質向上のために、お客さまとベトナム、日本合同の品質プロジェクトを発足させました。また、販売や調達においてもお客さまとの連携が不可欠のため、日本、ベトナム、インドネシア、タイなど各国にまたがって、営業戦略部門や調達部門との連携を図っています。これらは、「お客さまとの協働」を大事にする日本の共同印刷と同じメソッドです。日本だけでなく、各国でお客さまとの接点が増え、信頼関係がより強固なものになったと感じます。
材料においても、ASEAN圏内からの調達をめざしており、日本から輸入している原反について切り替えを進めています。
海外企業から購入の際は品質設定を厳格に行う必要がありますが、現地調達は物流の効率がよく、現地社会への貢献にもつながります。コストによっては同じ材料を共同印刷と共通調達することも検討しています。 お客さまとの強いつながりにより盤石なバリューチェーンを確立し、今後は医薬品市場でも存在感を示していくことをめざしています。
ベトナムは労働人口が多く、工場のあるドンナイ省ビエンホア地区も20~30才の若い労働者が多い地域です。生産規模に合わせて増員は可能なものの、現地の文化や慣習に配慮した、きめこまかな技術指導やコンプライアンス教育を行っていく必要があります。
チューブ製造は技術の習得に時間がかかるため、繰り返しの教育、指導が欠かせません。言われたことはしっかりと対応してくれるスタッフが多いですが、問題点の報告などが定着しづらく、日本的な労働管理の面でも教育が必要です。環境保全、安全衛生、清掃なども徹底しています。
印刷技術の知識や経験をもつ人材を育成するため、日本から技術指導者を招き、実技による指導を行っています。環境面では、ロス率削減による廃棄物量の削減、分別廃棄、空調温度管理など、環境負荷の軽減につながる取り組みを日常的に推進しています。
労働環境面でも、安全面のインフラなどの保全、設備の故障への早急な対応などで、常に従業員が働きやすい環境を整え、福利厚生(社員旅行の実施)や諸手当の充実と合わせ、社員満足度の向上に努めています。
花王ベトナムでは、消費者起点の"よきモノづくり"を通じて「人々の豊かな生活文化の実現に貢献」することを使命に、活動を続けています。健康、衛生などの社会の課題の解決にむけ、人々に健やかな暮らしを提案する製品、皆さまに喜んでいただける商品の開発を行っています。社内では、環境、労働、安全、衛生、防災に対する取り組みを強化し、サステナビリティに配慮したモノづくり、社員にとって働きやすい職場環境をめざしています。
ベトナム進出以来、地域社会への貢献の一環としてユニセフと連携し、アンザン省の貧困層への衛生環境改善、衛生製品提供や衛生管理促進活動を実施しています。孤児院と障がい者介護センターの訪問と当社製品の寄付活動を実施しています。また、従業員によるハノイ、ホーチミン地域の小学校における衛生学習サポート活動も実施しています。
共同印刷ベトナムとは、設立以来、パートナーとして協業いただいています。今後は、使用価値が向上された、新たな生活必需品を市場にお届けできるという期待をもっています。使用価値とは、機能利便性、環境負荷低減材料で環境リサイクルに貢献する新たな提案製品です。そのような技術を率先して開発し、提案していただけたらと期待しています。