藤森: 昨年は3カ年にわたる中期経営計画の初年度として、基本方針である「強みの育成・拡大と、事業基盤の改革に挑戦し、成長を続ける」に基づいた取り組みを進めました。2019年3月期の業績は、売上高977億8千2百万円(前期比2.8%増)、経常利益17億4千8百万円(前期比33.9%減)でした。情報系事業では、社会におけるデジタル化の進展などにより、従来から大きな売上高を持っていた出版や販売促進分野を中心に紙媒体印刷の減少が続き、私たち印刷業にとって厳しい状況となっています。一方で、電子書籍やデジタル分野を中心としたプロモーション分野は好調です。また、企業の持つ顧客データをお預りして印刷物に加工するデータプリントや、その周辺に派生する事務作業を一括して請け負うBPO事業は堅調に推移しており、当グループも事業拡大に努めています。生活・産業資材系事業では、主に軟包装や紙器などのパッケージ類とラミネートチューブを扱っています。事業拡大をめざし、設備投資やM&Aなど大きな投資を行っています。蟹江: 本当に多岐な領域にわたっていますね。最近は、事業戦略を考える上で、CSRやSDGsのような社会的視点が重要視されていますが、御社の事業もリスクと機会の両面からアプローチするべきだと思います。例えば、紙を使う事業では、原材料がどのような森林からきたのか、その森林は適切に管理されているか、そこで児童労働などの人権侵害が行われていないかなど、リスクの面から見た責任があります。一方、機会の側面では、社会課題に対応することで、新たなマーケットを開拓していく可能性が生まれます。リスクに対応し、モノのトレーサビリティが広がれば、それだけコストもかかってきますが、それが付加価値として提供されることで「市場価値」になるという点が、今、CSRが変わってきている部分でもあります。このような観点から言えば、国際社会が共通の課題として取り組むSDGsの17の目標と169のターゲットは、事業における「気づきのリスト」にもなっています。数ある課題のなかでも最近クローズアップされているのが海洋プラスチック問題ですが、容器包装をビジネスとされている御社にとっても関係が深いのではないでしょうか。藤森: 当グループは生活・産業資材系の事業を中心に、共同印刷グループは、TOMOWELの理念実現を通し、持続可能な未来に貢献していくことをめざしています。本報告書では、世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の推進役であり、第一人者である慶應義塾大学の蟹江憲史教授をお招きし、当グループのCSRの取り組みとSDGsに貢献する価値創造の可能性について対談を行いました。TOMOWELの理念で、SDGsがめざす未来を創るトップ対談2 共同印刷グループ CSR報告書 2019
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